パラレルワールドって信じていますか?
いきなり怪しい話が始まったと思った方、大丈夫です。今日は宇宙の話でも、スピリチュアルの話でもありません。
経営の話です。
でも私は、事業をやっていると本当に「未来ってひとつじゃないな」と思うことがあります。
私たちはつい、未来に向かう道は一本だと思ってしまいます。
まず人を採用する。
その次に仕事を増やす。
売上が増えたら車を増やす。
それから次の営業所を出す。
きれいですよね。
経営計画書に書いたら、ものすごく優秀な社長に見えます。
ところが現実は、そんなにこちらの都合よく並んでくれません。
「採用してから集客しよう」と思っていると応募が来ない。
「まだ人を増やすには早いな」と思っていると、なぜかすごくいい人から応募が来る。
「今月は少し落ち着いているな」と思った瞬間に、問い合わせが重なる。
経営を20年以上やっていますが、いまだに未来から事前に電話がかかってきたことはありません。
「来週の火曜日に応募者が来ます。その翌週から仕事が増えますので準備してください」
そんな親切な未来は一度も来ませんでした。
だから私は、途中から考え方を変えました。
未来を当てようとするのではなく、どの未来が来ても前に進めるようにしておけばいい。
これが、私の中でいう「パラレルワールド思考」です。
私の会社では、基本的に求人を出し続けています。
そして同時に、集客の行動も止めません。
病院やケアマネジャーさんへの営業をする。ホームページを更新する。SNSで発信する。地域でつながりをつくる。
普通に考えれば、「人が足りないなら、これ以上仕事を増やしてどうするの?」となります。
確かにその通りです。
仕事だけ増えて、人がいなかったら現場は大変です。
電話が鳴るたびに、
「ありがたい。でも怖い」
という、経営者として非常に複雑な感情になります。
売上は欲しい。でも仕事は来すぎないでほしい。
冷静に考えると、かなり勝手です。
でも、私は集客を止めません。
なぜなら、自社で受けきれない仕事が出たとしても、その仕事を信頼できる事業者につなげることができるからです。
介護タクシーは、一社だけですべての依頼を受けることはできません。
時間が重なることもあります。車両が足りないこともある。遠距離搬送や複数人での対応が必要になることもあります。
以前だったら、自社で受けられない依頼は、
「申し訳ありません。その時間はいっぱいです」
で終わっていたかもしれません。
でも、事業者同士のつながりがあれば、
「うちでは難しいですが、こちらの事業者なら相談できるかもしれません」
と次につなぐことができます。
すると、自社で受けられなかった仕事も無駄になりません。
もちろん、その仕事の売上が自社に入るわけではありません。
でも、仲間に仕事をつなげることで関係が強くなる。自分たちが困ったときには助けてもらえる。地域全体で受けられる仕事の量も増えていく。
つまり、集客が先に成功しても前進なのです。
では、求人が先に成功したらどうでしょうか。
これも前進です。
人が増えれば、これまで断っていた仕事を受けられるようになります。
受けられる件数が増えれば売上が増える。
仕事が増えれば車両を増やせるかもしれない。
さらに人を増やすこともできる。
そして、その先には新しい営業所や新しい役割も見えてきます。
つまり、
求人が先でもいい。
集客が先でもいい。
もっと言えば、仲間とのつながりが先でもいい。
どこから始まっても、事業が拡大する方向につながっていればいいのです。
ここで多くの人がやってしまうのが、「順番待ち」です。
「人が採用できたら営業しよう」
「売上が増えたら人を採ろう」
「もっと余裕ができたら新しいことを始めよう」
気持ちはよく分かります。
私も昔はそうでした。
でも、これをやっていると何が起きるか。
ずっと何かを待っている状態になります。
人を待つ。
仕事を待つ。
お金を待つ。
タイミングを待つ。
気づいたら、一年経っています。
そして年末に、
「今年もいろいろありましたね」
と言って終わります。
いや、たしかにいろいろはあったんです。
でも、振り返ると何も変わっていない。
これは結構怖いことです。
だから今の私は、できるだけ複数の道を同時に動かします。
求人を出す。
集客する。
人に会う。
仲間を増やす。
情報を発信する。
事業者同士で連携する。
それぞれは別々の行動に見えますが、向かっている方向は同じです。
事業を大きくする。
組織をつくる。
一社だけで抱え込まず、仲間と一緒に地域の移動を支えられるようにする。
この方向さえ決まっていれば、成果が出る順番はそれほど重要ではありません。
私は、経営で大事なのは「正しい未来を当てること」ではないと思っています。
そもそも、未来なんてほとんど当たりません。
当たるなら、私は20年前からもっと楽をしています。
むしろ重要なのは、
どの未来が来ても、それを前進に変えられる状態をつくっておくことです。
採用が先に成功する未来。
集客が先に成功する未来。
仲間が先に増える未来。
思いがけない仕事の話が先に来る未来。
どれが先でもいい。
全部の道を、同じ方向につないでおけばいいのです。
これが私の考える、経営におけるパラレルワールドです。
未来に向かう道はひとつではありません。
一本道しかないと思うと、その道が止まった瞬間に焦ります。
でも、
「こっちが止まったなら、今はこっちから進めばいい」
と思えれば、経営はずいぶん楽になります。
そして不思議なもので、いくつもの道を同時に進んでいると、あるとき道同士がつながり始めます。
採用した人に仕事を渡せる。
増えた仕事を仲間につなげられる。
仲間が増えることで新しい仕事が入ってくる。
そこでまた人が必要になる。
すると求人が生きてくる。
そうやって、一つひとつの行動が循環し始めると、事業は少しずつ大きくなっていきます。
あなたの事業では、今どんな未来を待っているでしょうか。
「これができたら次へ進もう」と、ひとつの条件が整うのを待っているものはありませんか。
もしあるなら、その条件が整うまで止まるのではなく、別の道から同じ未来に近づけないか考えてみてください。
今日できることは、とても小さくて構いません。
求人を一本出す。
一件営業に行く。
一人に連絡する。
一つ発信する。
未来をひとつに決めつけず、別の入口を一つ増やしてみる。
その小さな一本の道が、思ってもいなかった場所で、あなたが目指している未来につながるかもしれません。

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