もしあなたが、日本を代表するレベルのギタリストだったらどうしますか?
私だったらたぶん、
ギターの音、大きくします(笑)。
せっかく弾けるんですから。
「ここ、俺です!」
「今のフレーズ聴いた?」
くらいの勢いで前に出したくなると思います。
ところが、B’zの松本孝弘さんを見ていると、そこが面白い。
もちろん松本さんのギターは強烈です。
イントロを数秒聴いただけでB’zだとわかる曲もありますし、ギターソロになれば圧倒的な存在感があります。
でも、曲全体を聴くと、
ずっと「俺のギターを聴け!」ではない。
稲葉浩志さんの歌が前に出るところでは、ちゃんと歌が届く。
メロディーを聴かせるところでは、メロディーが残る。
必要なところでギターが出てくる。
これ、経営と同じなんじゃないかと思うんです。
得意なものほど、見せたくなる
人間って面白いもので、自分が得意なことほど見せたくなります。
料理が得意なら、
「これ、隠し味わかる?」
筋トレしている人なら、
聞いてもいないのにプロテインの話が始まる(笑)。
経営者なら、
「この仕事は俺が一番わかっている」
となる。
私もそうです。
介護タクシーを20年以上やっていますから、現場に出れば自分でできます。
電話もできる。
見積もりもできる。
運転もできる。
介助もできる。
トラブルが起きても対応できる。
そうすると、ものすごく危険な言葉が出てきます。
「自分でやったほうが早い」
経営者なら、一度は言ったことがあるんじゃないでしょうか。
そして困ったことに、
本当に自分でやったほうが早い(笑)。
だから、いつまでたっても自分でやる。
これが罠なんです。
松本孝弘は「ギターがうまい人」だけではなかった
松本さんの面白さは、単にギターがものすごくうまいことだけではないと思います。
B’zを始めた初期から、「どうすれば売れるのか」という視点を持っていたことが、当時の制作関係者の証言からもうかがえます。
ここが重要です。
もし、
「自分のギターテクニックを見せること」
が一番の目的だったら、B’zの音楽は今とは違うものになっていたかもしれません。
でも目的は、
「松本孝弘はこんなにギターがうまいんだぞ」
と証明することではない。
B’zという作品を、多くの人に届けること。
そう考えたら、何を前に出すべきかが変わります。
歌を届けるなら、歌。
メロディーなら、メロディー。
そしてギターが必要な瞬間には、ギター。
つまり、
目立たないのではなく、目立つ場所を選んでいる。
私はここに戦略を感じます。
「売れる」を優先すると、自分を引っ込める瞬間が出てくる
これは商売でも同じです。
経営者は、自分の商品に思い入れがあります。
「このサービスは素晴らしい」
「この技術を知ってほしい」
「ここまでこだわっているんです!」
でも、お客様からすると、
「で、私に何のメリットがあるんですか?」
だったりします(笑)。
厳しいですが、これが市場です。
自分が話したいことと、お客様が聞きたいことは違う。
自分が売りたいものと、お客様が欲しいものも違う。
だから商売では、
「自分が何を見せたいか」より、「相手に何が届くか」
を考えなければならない。
これは簡単なようで、なかなかできません。
自分の得意技を一歩引っ込めなければならないことがあるからです。
超一流のギタリストなのに、ギターを弾かない
私は松本さんについて調べていて、象徴的だと思った話があります。
GLAYのTAKUROさんのソロ作品を松本さんがプロデュースしたときです。
松本さんはTAKUROさんの強みとして「メロディー」を大切にしました。
そして面白いのが、
松本さん自身はギターを弾かなかった。
いやいや。
松本孝弘ですよ(笑)。
私だったら、
「せっかくだから一曲くらい私もやりましょうか?」
くらい言ってしまいそうです。
でも、そこで自分が出ることが作品にとって一番いいとは限らない。
誰が主役なのか。
何を届ける作品なのか。
それを優先する。
ここにプロデューサーとしての考え方が表れているように感じます。
そして私は、ドライバーを降りる
実は今、私自身も似たような転換点にいます。
2026年10月から、私は基本的に介護タクシーのドライバー業務から外れます。
20年以上やってきた仕事です。
だから、
「現場が嫌になったんですか?」
ではありません。
むしろ逆です。
できるからこそ、やってしまうんです。
そして私が一日現場に出れば、一人分の仕事はできます。
でも経営者として考えたとき、
私が一人分働くことが、本当に会社にとって一番いいのか?
という疑問が出てきました。
スタッフを育てる。
組織をつくる。
外部との関係をつくる。
新しい仕事をつくる。
そして、これからの移動支援の仕組みをつくる。
そちらに時間を使ったほうが、会社全体としてできることは大きくなるかもしれない。
そこでようやく気づきました。
私はずっと、
自分のギターの音を大きくしていたのかもしれない。
社長が一番目立つ会社でなくてもいい
会社を始めた頃は、それでいいと思います。
社長が営業する。
社長が現場に出る。
社長が一番働く。
私もそうしてきました。
でも、組織が大きくなっても同じことを続けていたらどうでしょう。
社長がいないと仕事が進まない。
社長がいないと判断できない。
社長が休むと会社が止まる。
それを、
「俺は会社に必要とされている!」
と喜んでいたら危ない(笑)。
それはもしかすると、
組織ができていないだけかもしれません。
リーダーの仕事は、自分が一番大きな音を出すことではない。
それぞれのメンバーが、一番いい音を出せる状態をつくること。
そう考えると、経営者の仕事は「演奏者」から「プロデューサー」へ変わっていくのかもしれません。
一番うまい人が、一番大きな音を出す必要はない
B’zの音楽から私が感じるのは、
一番うまい人が、一番大きな音を出す必要はない。
ということです。
自分が目立つことと、作品が成功することは違う。
会社でも同じです。
社長が目立つことと、会社が成長することは違う。
むしろ、自分の音量を少し下げた瞬間に、
「あれ、この人こんなことができたんだ」
「任せたら、自分よりうまいじゃん」
ということが起こるかもしれません。
ちょっと悔しいですけどね(笑)。
でも、それでいい。
自分より優秀な人が出てきたら、組織としては成功です。
だから今の私は、
自分が一番いい音を出すことより、みんなでいい曲をつくること。
そこに挑戦してみたいと思っています。
あなたの仕事でも、一度考えてみてください。
今、自分が一番大きな音を出している仕事は、本当に自分がやるべき仕事でしょうか?
もし一つだけ、
「これは誰かに任せられるかもしれない」
と思う仕事があったら、少しだけ音量を下げてみる。
すると今まで聞こえなかった、
誰かの新しい音が聞こえてくるかもしれません。

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