知っていましたか? 日本中の誰もが知っている「アンパンマン」のテレビアニメが始まったのは1988年。そのとき、生みの親であるやなせたかしさんは69歳でした。
もちろん、やなせさんは69歳まで何もしていなかったわけではありません。それ以前から漫画家、詩人、作詞家など幅広い分野で長く活動していました。しかし、現在のように「アンパンマン」が日本中の子どもたちに知られる国民的作品となっていったのは、人生のかなり後半になってからです。
私はこの69歳という年齢を知ったとき、少し驚くと同時に、「だったら、50歳なんてまだ全然遅くないじゃないか」と思いました。
私は1977年生まれなので、来年50歳になります。若い頃に想像していた50歳は、もっと人生が完成している年齢でした。仕事もある程度完成し、自分の生き方も決まり、それまでにつくってきたものを守りながら生きていく。そんなイメージを持っていたように思います。
ところが、実際に自分が50歳を目前にしてみると、感覚はまったく違います。最近の私は、これまでをどう守るかよりも、「これから何をつくろうか」と考えることのほうが増えています。
私が本気で人生を変え始めたのは46歳だった
私は2004年に介護タクシーを始め、20年以上この仕事を続けています。「20年以上事業を続けている」と言うと、長い時間をかけて計画的に会社を成長させてきたように見えるかもしれません。しかし、実際はそんなにきれいな話ではありません。
私が本当の意味で事業と向き合い始めたのは2023年、46歳のときでした。それまで19年間、介護タクシーを続けてきましたし、仕事をしていなかったわけでもありません。むしろ毎日忙しく働いていました。それでも、人生そのものを変えるつもりで経営や自分自身と向き合っていたかと言われれば、そうではなかったと思います。
46歳になって、ようやく「このままでは終われない」と本気で思うようになりました。そこから人に会い、学び、行動し、それまで自分が当たり前だと思っていた環境や考え方を少しずつ変えていきました。
当時は「もっと早く気づいていれば」と何度も考えました。30代から本気で経営を学んでいたら、40歳になる前に行動していたら、もっと違う人生になっていたかもしれない。過去を振り返れば、そう思うことはいくらでもあります。
でも、どれだけ考えても過去には戻れません。今の自分にできるのは、これまでの人生を後悔することではなく、その経験をこれからどう使うかを考えることです。
50歳から69歳まで、まだ19年ある
やなせたかしさんが69歳で大きな転機を迎えたことを知って、私は年齢に対する見方が少し変わりました。
50歳から69歳までは19年間あります。19年という時間を改めて考えると、決して短くありません。私は介護タクシーを始めてから、本当の意味で事業と向き合うまでに約19年かかりました。その間には、本当にいろいろなことがありました。
それだけの時間が、50歳からもう一度あると考えたらどうでしょうか。
新しい仕事を始めることもできます。会社をつくることも、本を書くことも、新しい仲間と出会うこともできます。誰かを育てることもできれば、これまで自分が経験してきたことを社会に還元していくこともできます。
そう考えると、50歳は人生の終盤ではありません。むしろ、これまでの人生で積み上げてきたものを使って、次の人生をつくり始めるスタート地点なのかもしれません。
50歳には、50歳だから持っているものがある
もちろん、20歳と50歳が同じだとは思いません。体力も違えば、残されている時間も違います。「年齢なんて関係ない」と言ってしまうのも違うと思っています。
ただ、50歳には20歳の頃には持っていなかったものがあります。
仕事をしてきた経験、人とのつながり、失敗した経験、人を見る力、うまくいかなかった悔しさ、遠回りした時間。若い頃にはなかった材料を、50歳の自分はすでにたくさん持っています。
だから、50歳から人生を変えるというのは、すべてを捨ててゼロからやり直すことではないのだと思います。これまでの人生で手に入れてきた材料を使って、これからの人生をもう一度組み立て直していく。私はそれを「人生の再構築」と呼んでいます。
私自身、介護タクシーを始めてから本気で事業と向き合うまで、ずいぶん遠回りをしました。以前はその時間を「もっと早く気づけばよかった」と考えていましたが、最近は少し見方が変わりました。
一人で現場を走った経験も、お金がなかった経験も、売上が思うように上がらなかった経験も、人を雇って苦労した経験も、すべて今の自分の材料になっています。遠回りしたからこそ、同じように悩んでいる人に伝えられることがあります。
だったら、遠回りした時間までこれからの人生に使ってしまえばいい。過去を取り戻すことはできなくても、過去の経験をこれから誰かの役に立つものへ変えていくことはできると思っています。
すでに3冊の本を書いた。でも、まだ始まったばかり
46歳から自分の人生を変えようと動き始めてから、私自身にも少しずつ変化が生まれました。
その一つが、本を書くことでした。
私はこれまでに3冊の本を書きました。
昔の自分からすれば、自分が本を書くことなど想像もしていなかったと思います。しかし、自分が20年以上介護タクシーを続けてきた経験や、事業をつくる中で失敗してきたこと、遠回りしてきたことを振り返ってみると、それを必要としている人がいることに気づきました。
自分にとっては当たり前になっている経験でも、これから同じ道を歩く人にとっては役に立つかもしれない。それなら、自分の中だけに置いておくのではなく、言葉にして残していこうと思うようになりました。
3冊の本を書いたことは、私にとって一つの成果です。でも、これで何かを成し遂げたとは思っていません。
むしろ、ここからだと思っています。
これからは、自分のためだけではなく世間に役立つことをしたい
若い頃の私は、自分が生きていくことで精一杯だったように思います。どうやって仕事をつくるか、どうやって売上を上げるか、どうやって生活していくか。目の前のことで必死でした。
でも、50歳を目前にした今は、少し考えることが変わってきました。
これから自分が何を手に入れるかだけではなく、これまで自分が経験してきたことを使って、世間に何を残せるだろうかと考えるようになっています。
介護タクシーという仕事を20年以上続けてきた経験があります。うまくいったことだけではなく、失敗したこともたくさんあります。経営に本気で向き合うまで19年もかかりました。
だからこそ、これから介護タクシーを始める人には、私と同じ遠回りをしなくてもいいように伝えられることがあります。すでに事業を始めている人には、10年、20年と続けられる事業をつくるために共有できる経験があります。
そして介護タクシーという一つの仕事だけにとどまらず、移動に困っている人を支える仕組みや、人と人が助け合えるつながりをつくることにも、自分の経験を使っていきたいと思っています。
50歳からの人生では、「自分が成功すること」だけを目標にするのではなく、自分が動くことで誰かが少し良くなるような活動を増やしていきたい。
それが、これからの自分にとっての成功なのかもしれません。
69歳になったとき、何を残せているだろう
やなせたかしさんの人生と私の人生を比べるつもりはありません。ただ、69歳という年齢でアンパンマンが大きく広がっていったことを知ると、「人生がいつ大きく動くかなんて誰にも分からない」と思います。
私は来年50歳になります。
69歳まで、あと19年あります。
この19年間を、自分のためだけに使うのか。それとも、これまで経験してきたことを誰かのために使っていくのか。それによって、69歳になったときに見える景色は大きく変わるような気がしています。
本も、これからもっと書いていきたいと思っています。介護タクシーや移動支援について伝えられることもまだたくさんありますし、人生を遠回りしてきた自分だから書けることもあると思っています。
そして、本を書くことだけではありません。人を育てること、人と人をつなぐこと、新しい仕組みをつくること。これまでの経験を使って、少しでも世間の役に立つ活動を増やしていきたいと思っています。
69歳になったとき、自分がどこまで行っているのかは分かりません。
でも一つだけ決めています。
「あのとき、もう50歳だからと諦めなくてよかった」
そう思える19年間にすることです。
「もう50歳」ではなく「まだ50歳」
50歳を「もう50歳」と考えることもできます。でも私は、「まだ50歳」と考えてみたいと思っています。
過去を変えることはできません。遠回りした時間を取り戻すこともできません。でも、その経験を使ってこれから誰かの役に立つことはできます。
そう考えると、人生の後半は、若い頃とは違う面白さがあるのかもしれません。
若い頃は、自分の人生をつくる。
そして、ある程度の経験を積んだら、その経験を誰かのために使っていく。
それもまた、人生の再構築なのだと思います。
私自身、まだその途中です。
50歳から何ができるのか。これまでの人生で集めてきた経験を使って、どれだけ世間の役に立つことができるのか。
これから自分自身で確かめていきたいと思います。
何かはじめるには、今日がいちばん早い日。

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