本を読んだり、人の話を聞いたり、セミナーに参加したり、学ぶ方法はいくらでもあります。私自身もこれまで、経営や組織づくり、人との関わり方について多くのことを学んできました。
ただ、長く仕事を続けるほど強く感じるようになったことがあります。
それは、どれだけ良いことを学んでも、知っているだけでは自分のものにはならないということです。
人から教えてもらったときには、「なるほど」「確かにそうだ」と思います。その瞬間は理解したような気にもなります。しかし、実際に自分の仕事に当てはめてみると、思ったようにはいかないことの方が多いものです。
会社の規模も違えば、働いている人も違います。地域も、お客様も、業界の商習慣も違います。誰かのところでうまくいった方法を、そのまま持ってきたからといって、同じ結果が出るわけではありません。
だからこそ、「では、自分の現場ではどうすればいいのか」と考え、実際に試してみる必要があります。私は、その瞬間から本当の学びが始まるのだと思っています。
教わったことは、実践して初めて意味が分かる
私はこれまで、料金の決め方を変えたり、営業方法を変えたり、人を採用したり、仕事を任せたり、新しいサービスを始めたりと、いろいろなことを試してきました。
もちろん、全部がうまくいったわけではありません。思ったほど反応がなかったこともあれば、想定していなかったところで問題が起きたこともあります。
それでも今振り返ると、うまくいかなかったことから学んだことは非常に多かったと思います。
頭の中で考えている段階では、「たぶんこうなるだろう」としか分かりません。しかし、一度でも実際にやってみれば、何が通用して、何が通用しないのかが見えてきます。
そこで初めて、「この部分は合っていた」「ここは自分たちには合わなかった」「もう少し形を変えれば使えるかもしれない」と考えることができます。
そして、不思議なことに、実際にやってみた後で改めて教わった言葉を思い返すと、それまでとは全く違って聞こえることがあります。
「あのとき言っていたのは、こういうことだったのか」
知識として理解していたものが、経験と結びついた瞬間です。
誰かの言葉だったものが、自分の経験を通して、少しずつ自分の言葉に変わっていく。私は、それが「学んだことが自分のものになる」ということなのだと思っています。
「100回ではなく1000回」という基準
私が長く学ばせていただいている師匠には、**「100回ではなく1000回」**という基準があります。
何かをやると決めたとき、100回程度でやったつもりにならない。1000回という回数を積み重ねるくらいの基準を持つ。
最初にこの考え方に触れたときは、1000回という数字はかなり大きく感じました。
しかし、仕事を続けていく中で、この基準の意味が少しずつ分かるようになってきました。
私たちは何かを始めたとき、数回やって反応がなければ「これはうまくいかないのではないか」と考えがちです。営業を数件やって結果が出ない。発信を何回か続けても反応がない。新しい仕組みを導入してみたものの、すぐには定着しない。
そこで方法そのものが間違っていると判断してしまうことがあります。
でも、本当に方法が悪かったのでしょうか。
単純に、試行回数が足りていないだけかもしれません。
営業でも、発信でも、採用でも、人材育成でも、仕組みづくりでも、数回やっただけで本当の良し悪しを判断することは難しいものです。
100回やると、ある程度のパターンが見えてきます。しかし1000回という基準を持つと、さらにその先があります。
誰に通用するのか。どんな状況では通用しないのか。どこを変えると反応が変わるのか。自分自身の技術や伝え方にどんな癖があるのか。
回数を重ねた人にしか見えないものがあります。
一回の結果に振り回されなくなる
「1000回」という基準のもう一つの良さは、一回一回の結果に必要以上に振り回されなくなることだと思います。
今日うまくいかなかった。
一人に断られた。
一つの投稿に反応がなかった。
新しいやり方が一度失敗した。
それだけを見ると落ち込むこともあります。
しかし、1000回という基準で考えれば、それは1000回のうちの一回です。
一回の失敗そのものよりも、そこから何を学び、次の一回をどう変えるかの方が重要になります。
そう考えると、失敗に対する見方も変わります。
以前の私は、成果というと、売上が上がった、仕事が増えた、人が定着したといった、分かりやすい成功をイメージしていました。
今は、「このやり方ではうまくいかなかった」と分かることも、一つの成果だと考えています。
なぜ結果が出なかったのか。どこまでは機能したのか。業界の特殊性なのか、地域性なのか、会社の規模なのか、単純に回数不足なのか。
そこまで考えれば、それは失敗ではなく検証結果になります。
一回の成功や失敗で結論を出すのではなく、一定の回数を重ね、その中から傾向を見ていく。
それが実践なのだと思います。
学びと実践の距離を短くする
最近、私が意識しているのは、学んでから実践するまでの時間をできるだけ短くすることです。
良いと思ったことがあれば、できる範囲でまず試してみる。最初から完璧な仕組みを作ろうとするのではなく、小さく始める。そして結果を見ながら直していく。
もちろん、何でも勢いだけでやればいいという話ではありません。大きなお金が動くことや、人の安全に関わること、取り返しのつかないことは慎重に考える必要があります。
一方で、やり直せることまで完璧になるのを待っていたら、いつまでたっても実践には移れません。
何週間も考えていたことが、一度やってみるだけで分かることもあります。
そして、一度で終わらせない。
二回、三回、十回、百回と繰り返しながら修正し続ける。
その先に1000回という基準がある。
そうやって繰り返していくうちに、最初は誰かに教えてもらった方法だったものが、少しずつ自分の感覚になっていきます。
そして最終的には、「こういう場合はこうする」という自分自身の基準になっていきます。
自分の基準は、回数の中から生まれる
経営を続けていると、「正解を知っている人」を探したくなることがあります。
私自身も、たくさんのことを人から学んできましたし、これからも学び続けると思います。
ただ、最近は誰かから正解をもらうことよりも、教わったことを自分の現場でどこまで検証できるかの方が大切だと感じています。
時代が変われば、正解も変わります。市場も、人も、お客様の価値観も変わります。
だから、一度うまくいった方法を「これが正解だ」と固定してしまうのではなく、今でも本当に通用しているのかを試し続けなければなりません。
学ぶ。
現場で試す。
結果を見る。
修正する。
そして、また試す。
この繰り返しを、100回ではなく1000回という基準で続けていく。
その中で初めて、自分なりの基準ができていくのだと思います。
学んだことは、現場で試して初めて自分のものになる。
そして、試したことは、繰り返して初めて自分の力になる。
これからも私は、知っていることを増やすだけではなく、実際にやった回数を増やしていきたいと思っています。
それが、私にとっての「学びと実践」です。

コメント